019号 秋風の真ん中にいますが
その日も朝から起きられず、始業10分前に起床してアレクサにTokyoFMを流してもらう。ユーミンの青春のリグレットが流れてきて、久々に聴いた嬉しさで歌いながらリズムに乗ってslackを眺めていたら、風がすーっと通ってオロオロ泣いてしまった。秋、無意味に感傷的になってしまう気候と感情の具合です 涙腺が秋風によわい。
金曜、会社の同期との飲み会。まだ業務は終わっていないが終わったことにしてPCを閉じて出口に向かう。久々に19:00ごろにエレベーターに乗ると、帰り際の同じ会社の人たちで満ち満ち。だれも知らない。降りると同期と顔を合わせる。同じ箱にいたのに気づかないほどの満員具合と自分のアンテナの低さにひく。
金曜夜の有楽町は浮かれた人たちだらけで引っ張られそうになる。先週行った、煙が充満した高架下の焼き鳥屋に目配せしながら目的地に行く。研修以来、3ヶ月ぶりにちゃんと話した同期はしっかり会社員になっていて、おお、とおもう。ちゃんと任された職務を全うしようという意志を感じる、すごい。私はどうだろう。昼休憩にぬくぬく銭湯に行ったり、とりあえず全ての仕事にやりたそうな声色で会話をしたり、slackのスタンプでウケを狙おうとしたりしている。だめだ、同じ勤務先とは思えない。薄いハイボールを多めに流して考えなかったことにする。
そしてわたしの金曜日は有楽町では終わらない。だって、今夜東京から京都に行くのだから…
国分寺にオープン予定の喫茶店のお手伝いをしていて、そのメンバーで京都の喫茶店巡りをしよう、となっていた。中央線に飛び乗り、国分寺駅に向かい、車に乗る。社用と私用のPCどちらもかかえてきたので重い。だけど私は今から京都に行くのだから、そんなのはどうでも良い。秋の京都への期待感はすごい。
長い道のりだから、仕事の話にもなるし、私生活の話にもなる。夜道のドライブは、なぜか本心を言わなくてはいけないような、なんというか無理のないプレッシャーを感じる。真っ暗な密室がひたすら前に進んでいるという異常な状況では嘘がつけない。
自分の仕事の話になるたびに黙ってしまう。「それ続ける理由あるの」と聞かれ、あー、うー、えー、とか言いながら ないですね、と言った。ないです。ありません。ありませんね。誰かに意味を与えられないと動けないほど、私は弱くないはずだった。元気出していこう。意思行方不明の私の話をきいてくれる人がいることがありがたい。
だいぶ前に一人で京都に行った時に諦めていた、喫茶ソワレに並ぶ。ひとりだと、(過剰な自意識のせいで)列に並べないので、嬉しい。入り口に置かれていた説明のパンフレットを見ながら、私の方がうまくレイアウトできるな、などと思う。中は青い照明で、幻想的な雰囲気が非日常で良い。制服の店員さんが、かの有名なゼリーポンチを複数お盆に乗せて運んでいる姿があまりにもおとぎ話のようで見入ってしまう。いい。とても。
コーヒーのわかる人と喫茶店に行くと、何が美味しくて美味しくないのか、ちゃんと言葉にして教えてくれるので面白い。と、思いながら、言葉によってでしか世界を理解できないもどかしさも思う。コーヒーを飲むと、自分と同じ流派か否かがわかるらしい。側から見たらわかりづらい仲間意識が羨ましく感じる。コーヒー屋を2軒はしごし、途中でお昼寝を挟みながらもう一軒夜カフェに行く。京都の夜は繁華街と優雅な高級感ある街並みが入り混じっていた。そして良い路地裏をたくさん見かけた。
翌日は、念願のホホホ座、恵文社、鴨川湯などに行けた。嬉しい。京都に来てから読みたい本、眺めたい本、部屋に置いておきたい本などたくさん出会えた。まだ大丈夫だと思えている。たくさんの人の魂が込められた書物に囲まれると、自分は何をしているんだろうとお腹が痛くなってしまう。せめても、と本を買います。私もつくろう。


